道端にひっそりと建っていた古びた祠にバイクごと突っ込み、意識を失ってしまう拓也。 再び目を覚ました時、視界に飛び込んできたのは、 仰向けに倒れた自分を、宙に浮かんだまま覗き込む、奇妙な格好をした少女の姿だった。 「あ、お目覚めですね。ご無事のようで何よりです」
ゆっくりと身を起した拓也に微笑みかける、不思議な格好をした少女は、 自らを土地の守り神である 『ゆのは』だと名乗る。
突然のことで呆気に取られている拓也に対して、 ゆのはは土地神としての力を使って、瀕死の重傷を負っていた拓也を治療したことを語る。
「いえいえ、お礼を言われるほどのことではありません。 その代わりと言っては何ですが、 壊れた祠の修理代を負担して頂けないでしょうか」
訳が分からないまま、とにかく礼を言おうとした拓也を制して、 どこからともなく取り出した電卓で見積もりを始めるゆのは。
「ぴっぽっぱ、 これなら235万円といったところでしょうか。 こんなの命の値段だと思えば、ぜーんぜんおトクですよね♪」
あくまで笑顔のまま、ゆのはは賽銭箱の形をした貯金箱を拓也に突き出してくる。
――こうして半ば強制的に、『命の恩人』であるゆのはの要求を聞くことになった拓也は、 『ゆのはな商店街』の中でバイトに明け暮れる日々を送る羽目になった………。